川口市長の部屋
チョウやトンボなどの昆虫たちはしたたかな生きもので、ある程度の条件さえ揃えば生きていくことができます。つまり、昆虫が生きていけない、また少ないということは、小さな昆虫たちが生きていくことさえできないほど自然環境の質が低下している状況であると言えます。その地に昆虫がいるかいないかというのは、自然の豊かさのバロメーターなのです。
私は小さい頃昆虫博士に憧れており、夏休みといえば昆虫採集に明け暮れていた“昆虫少年”でしたが、その頃にいた生きものが時代が進むにつれ目にすることもできなくなっていることがとても寂しいです。例えば、都市部ではなかなか見ることのできないオオムラサキも昔は川口にも生息していました。オオムラサキが幼虫の時に食べるエノキの雑木林や、成虫が蜜を吸うコナラの雑木林が川口に多くあったからです。
今、地球上では、森林伐採や魚介類などの乱獲などにより、かつてないスピードで自然環境が失われ、動植物の25%が絶滅の危機に瀕しております。人類の生存を支え、さまざまな恵みをもたらしてきた生物多様性の損失を食い止め回復させることが、地球規模の重要課題となっています。
そこで私は、身近な自然環境を守り未来につなげていくことや、未来を担う子どもたちが自然観察や自然を体験する機会を増やすことが生物多様性保全の第一歩であると考え、市長就任以来、水辺と雑木林の環境を整え、さまざまな生きものが生息・生育できる公園等の整備などに取り組んでいます。また、自然環境に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために設置した自然保護対策課では、小学生を対象とした「川口いきもの探検隊」や「夜のいきもの観察会」などを実施し、自然大好き、生きもの大好きな子どもたちを増やし、自然やいのちを大切にする心を育む取り組みも行っています。
生物多様性の保全は、一人一人が「自分事」ととらえ、これまでの意識や行動を変えるとともに、多様な生きものたちに興味を持ち、いたわる気持ちが大切です。皆さんが日々生活している間、小さな生きものたちもひっそりとではありますが、懸命に生きています。このコーナーでは、生態系を支える昆虫たちにスポットを当て、皆さんの好奇心や探求心に語り掛けていきたいと思います。また、皆さんが自然保護や環境問題について思いを寄せるきっかけになれば幸いです。では、どうぞ。
川口市長 奥ノ木 信夫